2009/07/19

オートチューンを知らない人のためのオートチューン解説(小説風)

テクニカル面についてはこちら。
オートチューンを知らない人のためのオートチューン解説(ハウツー編)

次回ワークショップのネタを作っています。次回はエフェクト類の話をしつつ、21世紀のテクノロジーとして「オートチューン(Auto-Tune)」を扱う予定なのですが、このオートチューンというピッチ補正ソフトについては楽曲制作にまったく興味の無い人であっても気になるのではないかと考え、このエントリを書きます。ソフトを利用したことのある人にとっては当たり前ですが、初めて体験する人にとっては、驚愕を覚えるかもしれません。

※ 録音の準備を一切せず(ヘッドホンなどを使用しませんでした)風呂上がりの全裸で一発撮りしたため(笑)、ノイズがかなり多く含まれています。理解の妨げにはならないと思うので、撮り直しせずお送りします。


◆Introduction
すすむ君はヒップホップが大好きな大学生です。最近は、T・ペインに代表される「変な声」を出したハマっています。その中でもとくに、カニエ・ウエストによる「ウェルカム・トゥー・ハートブレイク」はお気に入りの楽曲でした。


「さすがカニエだなあ。タカシムラカミを起用してしまいながら大成功してしまうだけの実力はある」と皮肉にもなっていないコメントをつけつつ、すすむ君は1:05あたりに聞こえる声をモノマネしてみようと思いました。大丈夫、森山直太朗のモノマネができたんだから、この変な声ぐらい簡単に習得できるだろう。そして、録音してみました。

01.mp3

「あれ、全く違うなあ」とは第一声。2拍休止後、恥ずかしさすら感じるようになりました。
「やっぱり日本人にはできない。あの声はアメリカの音楽学校で何年も練習して初めて習得するものなんだろうな」
そう考えたすすむ君は、この音声ファイルに「変な声・失敗.wav」を名前をつけ、ゴミ箱に入れました。

◆I control "Auto-Tune".
翌日、すすむ君は学校で友達のすむす君といつも通りヒップホップの話題を話していました。といっても、すむす君はネット上の友達。すすむ君は学校に話す人がいないため、ずっと携帯でメッセンジャーをしているのです。
「昨日、カニエ・ウエストの声マネをしてみたんだけど、全然ダメだったよ。やっぱりアメリカ人はすごいね。あの声はどれくらい練習しているんだろう」とすすむ君。
「えっ」メッセンジャーから即座に返事が返ってきました。「もしかしてオートチューン知らないの?www」
すすむ君はオートチューンを知りませんでした。しかし、知らないと答えるのもプライドが許さないため、
「ちがうよしってるよ」とぶっきらぼうに入力した後、「オートチューンを使わないでどこまでできるか実験しただけさ」と言い訳をし、即座にオートチューンというものを検索しました。

学校を腹痛ということで早退し、早速オートチューンのデモをダウンロードしてきたすすむ君。機動してみると、何やら分からないパラメーターが並んでいます。「ええい、よく分からないから、とりあえず色々イジって試そう」そう考え、ツマミを回すこと30分、ついにそれらしき声が出てきました。

02.mp3

「おお!なんかカニエっぽくなった!」大喜びのすすむ君。「それにしても、なんかこれ使うだけでこう変わるのもどうなんだろうか」
ほんの少しの煮え切らない気持ちを抱えつつ、その日の夜、早速メッセンジャーですむす君にこの音声ファイル「オートチューン.wav」を送りました。

◆I'm controled by "Auto-Tune".
「そうそう、オートチューンは便利でいいよね。これを上手くつかえば、ピッチも安定するしさ」とすむす君から返事が返ってきました。
「そうだよね、ピッチ安定は大事だからね」とすすむ君。もちろん、訳が分からないので、早速グーグルに単語を入力していきます。

グーグルによると、このオートチューンを使えば、カニエのように声を変化させる技術を使って音程をキーに合わせることができるらしいのです。むしろ、カニエのような変な声を出すほうが「誤った使い方」であるらしい。

調べ終わると、ちょうどそのとき、すむす君からファイルが送られてきました。タイトルは「オートチューン改良.wav」、どうやら自分の声を更にアレンジしてくれたようです。早速聴いてみました。

04.mp3

「こ、これはまさに蟹江じゃないか!」
すすむ君は驚きのあまり、「カニエ」を誤変換して「蟹江」と打ち込んでしまいました。
「そうそう。声をセンドで送って、そこにディストーションとリバーブをかけたら、こんな感じになってさ」とすむす君。いつものように検索すると、ディストーションは「音を歪ませる」エフェクト、リバーブは「音に響きを加える」エフェクトであるらしく、つまりあの声に歪みと広がりを加えたものが、この改良ファイルでした(※1)。

「なんだか凄いなあ。でも、こんな簡単に声を変えられるんじゃ、逆に興味無くなっちゃうね。自分の声かどうかも疑わしいし」とすすむ君。
「僕は自分の歌声に自信があるからオートチューンは歌の下手な人に任せるよ。君は聴いたことないだろうけど、カラオケでの僕の声はめちゃくちゃ良いんだよ。とくに、<カラオケの館>での僕の歌はもう完璧すぎるぐらい完璧だからね。じゃあおやすみ」
と、パソコンの電源を落としました。

電源が落ちる前、一瞬だけメッセにすむす君からの返信がありました。しかし、すすむ君がその文面に目を落とす前に、先に電源が落ちました。誰にも読まれないメッセージの内容はこうでした。

「<カラオケの館>って、オートチューン標準装備だぞ。自分の歌が上手いかのように錯覚させる罠なのに、気がついてないのかwww」


(※1)実際にはもう少しだけエフェクトをかけています。具体的にはイコライザーで8kHz以上をカットし、コンプで音圧を少し上げました。

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