2009/12/09

w-indsonology(ウインズ学)

とっておきのこの景色は君とだけ見ていたいよ
今までが小さく見えて来るその頂を
これから探しに行こう オレが連れて行くよ
まだ見たことのない光を求めて、、、
(w-inds.「New World」『New World/Truth~最後の真実~』、VISION FACTORY、2009年。)








Soul Searchin' Home Page /ソウルサーチン ホームページ」というSOUL・R&Bの専門ページがあるのですが、そのHPの管理者であり最近は『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』という分厚い本の翻訳を手掛けたりなどされている吉岡正晴さんのブログで、「マイケル・ジャクソン学」という造語がありました。夢物語として本当に「マイケル・ジャクソン学」が正式な授業として採用されたら、いずれは「ウインズ学」がどこかの小さな短期大学で行われることもあるかもしれません。

もし『新しいウインズの教科書』を書こうとしても、マイケル・ジャクソンより規模が小さいとはいえ、w-inds.のこれまでを包括することは難しいです。しかし、ここ1年に絞って考察をするのであれば、明らかな変化を起こそうとしていることは明らかでしょう。それは、「アイドルによるブラック・ミュージックへの本格的な参戦」です。僕は、2008年の「Everyday/CAN'T GET BACK」がそのマニフェストであり、そして今回の「New World/Truth~最後の真実~」がマニフェスト達成の瞬間、w-inds.の大きな転換期だと捉えています。

そもそもw-inds.は、2001年のデビュー当初からブラック・ミュージックと高い親和性をもつアイドルとして活躍を始めました。当時はDA PUMPの人気もあってか、「DA PUMPの弟分」として扱われていたこともあります(同じVISION FACTORYの所属なので)。デビュー曲の「forever memories」はテンポこそ速いものの、ビートの基本はヒップホップのそれでした。そのようにデビューから現在まで、w-inds.はいくつかの道草(ブラック・ミュージックから離れること)こそあれど、基本的なスタンスを変えずに活動をしてきました(その中でいくつかの名曲も生まれています。「四季」は、ファンの中でも嫌いな方はいないであろう、いわゆる「間違いない」楽曲です)。
しかし、上記にも書いたような「道草」について、w-inds.には道草をしなければいけない理由がありました。それは、彼らに《不良(ワル)》のイメージをつけたくない、という判断からだと考えています。それはコジツケであるかもしれませんが、2005年にDA PUMPのメンバーが問題を起こしグループを脱退した事件が理由の1つです。この事件の後に出されたシングル『変わりゆく空』から、w-inds.の売上はガクンと落ちています(w-inds. - みんなのCD売上データ辞典 - livedoor Wiki(ウィキ)より)。こうした売上の低下は保守的なマーケティングにつながる。保守的なマーケティングではファン以外は購入しないし、ファンも減っていく。こうしたスパイラルは、分かってはいてもそう簡単に脱出することはできなかったのではないでしょうか(補足すると、何度かチャレンジもありました。「シュレック3のEDになった」と前置きをすると期待値が下がりますが、「LOVE IS THE GREATEST THING」という曲は個人的にw-inds.の中でも1・2位を争う名曲です)。

そうしたことを続けて2000年代も終わりに近づいた現在、ジャニーズ勢力の新たな拡大もあり、世間はもはやw-inds.を第一線のアイドルという認識をしてはいませんでした。しかし僕は、その辛い状況がw-inds.の「ブラック・ミュージックへの本格的な参戦」を決断することを踏み切った原因であることに、少し嬉しさすら感じていました。
こうして出された25枚目のシングルが「Everyday/CAN'T GET BACK」です。段階的な変化には必須の「これまでの要素(Everyday)」と「新たな要素(CAN'T GET BACK)」を上手にミックスさせたこのシングルは、閉塞を打ち破る期待をファンも見出したのか、売上はほぼ倍増しています(とはいえ、単純にCDの種類に比例して上昇したことも否定できません)。そして26枚目の『Rain Is Fallin'/HYBRID DREAM』で変化の方向性を提示し(とくにBATHLOGICを起用した「HYBRID DREAM」は名曲です。名曲による勢いだけで書いてしまった記事が「w-inds.「HYBRID DREAM」のメモ―アイドルと黒人音楽を考えるメモの1つとして―」ですが、いずれリライトします)、27枚目の今作で路線変更を終えたように見えます。

「日本のヒップホップ・R&Bは蛸壺化している」とよく言われますが(こんな危惧を聞いたこともない、という状況が蛸壺化を示す最大の証拠です)、そうした状況において「とくに音楽ジャンルを意識して聴いてはいないし、ただ単純に彼らが好きだからCDを買う」という音楽リスナーの存在はとても大事です。2010年の音楽シーンの1つの流れとして、「w-inds.発、マイケル・ジャクソン経由、最新R&B行き」という航路は、よくできた冗談では終わらない可能性を秘めています(第六感では、「いずれはヴァイナル(レコード)を切ることもあるかもしれない」とさえ感じています)。極論になりますが、これからの私たちが洋楽に興味を持つとすれば、その入口のほとんどはアイドルソングが担うことになる、というテーゼも笑い飛ばせません。

おそらく、2010年に発売されるであろう28枚目のシングルでも、この流れは続くでしょう。たとえば、少々タイミングは遅いですがAuto-Tune(Perfumeで有名になった、ボーカルの音程を操作できるソフトです)によるT-Painのような曲を出すかもしれませんし、それこそマイケルのカバーを出す可能性だってゼロではありません。最も大事なのは、このチャレンジを続けて「w-inds.にしかできない歌」を歌い続けてほしいということです。

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