オリコンをくまなく探しても名前すら拝むことのできないアーティストばかりを購入する人間にとって、デイリー2位のシングルを発売日に購入することは、ちょっとした興奮があります。モー娘。に始まり、PUFFYやらHALCALIやらPerfumeやら、全ての女性アイドルの波に乗り遅れて/早く乗りすぎていましたが、生まれて初めて時代の波と一致したような気が――ほんの一瞬ではありますが――しました。
12月9日、『New World/Truth~最後の真実~』というw-inds.にとって大きなの一歩になるだろう両A面シングルが発売されました。非常に大切な一枚になるだろうと思ったので(前エントリ「w-indsonology(ウインズ学)」を参照)、僕も発売日に買いに走ってしまいました(写真はタワレコ@池袋。店内を1周しましたが、そのほとんどはマイケルとロックと癒しで満たされていました)。「日米の最高峰とコラボレーション!!」という触れ込みは誇張ではありません。それぞれのプロデューサーを追いながら、曲に触れてみましょう。
「New World」は、日本の最高峰である今井了介によって作詞・作曲・編曲されています。有名な曲としては、DOUBLEの「handle (feat. F.O.H)」、安室奈美恵が現在のスタンスに至る転回点にもなったチームであるSuite Chicの「GOOD LIFE feat. FIRSTKLAS」等があります。w-inds.に関しては「Single Mega-Mix」で全シングルをミックスするという離れ業をやってのけたことでも有名です。
そんな彼にとっても、「New World」はブログでリップサービスを行うほどに自信のある仕上がりのようです。
今回のw-inds.、オレが手掛けてるだけあって!?(笑)かなりチャレンジ度の高い相当カッコいい仕上がりです。聴いてビビって下さいね
(Ryosuke Imai blog::New York, New York)
そしてそのリップサービス通り、「New World」は相当カッコいい仕上がりのハウスとして届けられました。おそらく、同じヒップホップ側からハウスに挑戦したブラック・アイド・ピーズを強く意識して製作したのではないでしょうか。たとえば、以下に紹介する「I Gotta Feeling」や「Rock That Body」などです。
YouTube - Black Eyed Peas "I Gotta Feeling"
曲が良いのはもちろんですが、僕は何度か聴くうちに、「今井さんもきっとw-inds.ファンだ!」と断定してしても間違いない、プロデューサーとして完璧な仕事だと感じました。とくに素晴らしいのは、(1)歌詞がw-inds.に沿って作られていることと、(2)ボーカルである橘慶太の《不良(ワル)》(もちろんマイケルの「BAD」が頭に浮かんだので)な面を起用しているということです。
まず歌詞について。w-inds.の名曲の1つに「special thanx!!」がありますが、「New World」はその最新版でもあります。
そっと重ねる手から伝わるよキミの気持ち oh...
ちょっとの間も離したくないキミとの距離を
これからどこ目指そう オレが連れて行くよ
まだ見たことのない世界を求めて、、、
(w-inds.「New World」『New World/Truth~最後の真実~』、VISION FACTORY、2009年。)
ある視点では「握手会の唄」ともとれるこの歌詞は、彼らがファンをネクストステージへ、つまりブラック・ミュージックの世界へ連れていくという意気込みを持っています。この歌詞を誰の協力も無しに書いたとすれば、今井了介はまさにこの時代にシンクロした作詞家です。また、久しぶりに橘慶太の口から「オレ」という言葉が出ていますが、楽曲の疾走感と相まって、ちょうどよいバランスの――まさに「BAD」を彷彿させる、カッコいいやつが一番《不良》なんだ、というメッセージをもった――《不良》のイメージができています。
《不良》については、マイケル・ジャクソンのダンスに捧げたかのようなPVがそれを具現化することに成功しています(ちなみにこのPVは、清水翔太などのPVも監督したムラカミタツヤによるものです。ここからもw-inds.の変化は本気であることが伺えます)。ディスコではなくクラブの雰囲気を持ち込み、マルタン・マルジェラのインコグニートを着用し、ワルそうなダチの視線を集めている。前エントリでは、「w-inds.によるブラックミュージックへの本格的な参入」をテーマとしましたが、このPVを見る限りでは、もう少し言葉を費やしたほうが良いかもしれない、つまり「ハイモード的なブラック・ミュージックへの参入」と書くべきでした(ジャラジャラの宝石を身にまとって金と女について語るような、ストリートのヒップホップではない、ということです)。
しかし、ほとんどのブラック・ミュージックに含まれている「男女の交わり」が排除されている点だけは、まだw-inds.がアイドルである証拠でもあります(それを除けば、LADY GAGAの「Just Dance」やPharrellの「Number One」など、前述の「ハイモード的なブラック・ミュージック」の流れを汲んでいると思うのですが)。そうしたことから、もしも「キミ」がモニターをうっとり見つめているファンのことでなく、モニターの中に映る美女になったとしたら、また大きな変化になるかもしれません。
追記:
w-inds.ファンですらどうでもいい話ですが、マスタリングは『Thriller』の25周記念アルバムでも活躍したスターリング・サウンドのトム・コインによるものです。「宇多田ヒカル初、CDとデジタル配信で異なるマスタリング」で、端的にその素晴らしさが紹介されています。個人的には、Naruyoshi Kikuchi Dub Sextetの『THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED』で初めて意識して聴きましたが、音圧や空気感にとても優れていると感じました。


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